【レビュー】世界は感情で動く

一冊読むとまた一冊、「次は何がいい?」といつも聞いてくれて新しい本を貸してくれる会社の大先輩からお借りした一冊。

本の構成はすごくシンプル。
・人間の行動って本当に非効率的で理屈に沿わないことってたくさんあるよね。
・でもそれって行動心理学ではこういう風に定義されているんだよ。
アメリカの大学の○○教授がこんな実験したよ。
・ほら、みんな一緒でしょ?
という流れがつらつら続きます。

興味のあった脳のトラップは以下の通り。

1.予言の自己成就
人間は自分の願望に向かって行動し、その結果として社会現象としてその願望が実現の方向へ向かう。
プラシーボ効果なんかはこの心理状況によるもの。

2.コンコルドの誤謬
投資したものがうまくいかなくなった時、損切りを早くすればそれだけ損失も小さく済むはずなのに、実際は「ここまで時間(お金)をかけたのに後には引けない」という意地のせいでさらにサンクコストが膨大になる現象。
「いまさらやめられない」って本当に非経済的で非効率的だけどよくある。

3.確実性効果
人間はある現象において、「0%」と「100%」に過剰な反応を示す。
無農薬、無添加の野菜もそうで、本来ならば日本中の野菜の農薬使用料を30%減らす方が現実的で達成も簡単、私たちの生活への影響も大きいのに(減農薬野菜の供給料が上がって価格も下がる)、実際は数パーセントの野菜を農薬ゼロの無農薬としてそれに莫大な開発コストをかけている。

4.アンカリング効果
人は最初に見た特定の数字などに縛られてしまい、そのあとの判断基準として固着する。
バーゲンで\10,000⇒\6,000と書いてあれば、モノを見ずとも「お買い得」だと思い込んでしまう。
「本日限り」「女性限定」「限定10名様」などもその例。
さらにアンカーの基準によって、そのあとの判断も変わってしまう。
一番高い商品だと言って見せると、人はそれが高い理由を積極的に探そうとする⇒高いものに納得しやすい。
アンカーに騙されないコツは、正反対のアンカーを想像してみること。
買おうとした家の値段が高かったら、それが格安で提示された時のことを想像して家を見るといい。

5.フォールス・コンセンサス効果
自分が考えることはきっと他人も考えるだろうという心理効果。
他人の事を知りたいけど他人の事はわからない。
誰なら一番分かるかな…あ、自分だ。
ということで他人の考え方を想像する時には、自然に自分の考え方を投影させてしまう。
バブルや恐慌もこの効果によるもの。

6.集団思考
個人では到底しないような決断も、集団においては合議され、責任不在の状態で事が進む。
会議の決定なんかはまさにこれで、みんながなんとなくいいんじゃないかと言い出した事は、そのまま流れで決定してしまう。
これを避ける為には、常に「よき反対者」の役回りが必要で、野党の様に外から常に違う視点を投げかける事が一番。

7.ハロー効果
何かを評価する時に顕著な特徴に引きづられ、他の特徴をもポジティブ/ネガティブに歪んで評価してしまうこと。
CMで良いイメージがつけば、勝手にそこの製品のイメージも良くなって売れることがこれ。
高いワインが美味しいと感じてしまうのもこれ。

8.順序効果
人間が覚えていられる情報の数は7つ。
長く記憶させたいことは最初に話し(初頭効果)、直後に印象強く残したいことは最後に伝えるといい(親近効果)。

9.保有効果
自分が所有しているものに高い価値を感じ、手放したくないと思う現象。
後から後悔したくないという心理作用により、自分が決断して手に入れたものが価値のあるものだという理由をすぐに見つける。
きっと私たちはだいたいのケースにおいて、人生の決断や衝動買いを後悔しないのはこれのせい。

10.損失回避性
人はある大きさの利益から受ける喜びよりも、それと同じ大きさの損失から受ける苦痛の方がはるかに強い。
保有効果の原因の一つとも。
投資する時には、買値ではなく将来への状況で判断すべき。
買値を気にしていつまでも保有していると、必要以上の価値を感じてしまう。⇦保有効果
これができれば、購入代金は、払わなくちゃいけない税金に対する参照点となり、期待値に合わせて「損している」株を売ればよい。
なぜなら、損している株にわざわざ税金を払わなくて良くなるから。

11.後悔の理論
人は短期的には失敗した行為の方に強い後悔の念を覚え、長期的にはしなかったことを悔やむ。
また同じ行動に対する残念な気持ちは、実体験よりも想像した時の方が大きい。

人間の行動は常に論理的効率的な様に見えて、その実はその逆であることは本当に多い。
自分のことでも、なんとなく自分の中でだまし騙し決めたりしてきたことに限って、この本の中に書いてありました。
自分の心理に打ち勝って、本当に実利益に直結する決断をするのは自分に嘘をついている様な不安感との戦いであるような気がするので難しいかもしれないけど、この本に書いてあった対抗策を教養として知っておけば、少なからずそれを武器に自分の心理と向き合えるのではないかなあ。

個人的にはこういう心理学要素の強い本は結局どうしようもない感じがして好きではないのですが、上の気になったやつ以外にも色々な事例が載っているので、自分の行動に裏打ちされている心理的要因を知りたい方はぜひどうぞ。